「橋」を考える

・・・ 起源・漢字・言葉から ・・・


 人は水の無いところでは生きていけない。水は川。チグリス、ユーフラテス川流域のメソポタミアをはじめとする世界四大文明の発祥地も全て川のほとり。しかし、川は往来の妨げにも。渡るためには舟や橋が必要。文明が進み交流範囲が広がるにつけ、対岸へ渡る必要性や頻度も高くなり、短時間に行き来できる「橋」の必要性は増します。
 そんな「橋」に関して、ただ気付いたり調べたりしたことを書き綴ったページです。

「橋」の起源は

 橋は、いつ、どこで、どのようにしてできたのでしょうか。人が川を渡るのに、最初は水の中を歩くか泳いで渡っていたことでしょう。対岸へ渡るのが頻繁になればなるほど、より簡単に早く渡りたいと考えるのは当然のことです。
 たまたま都合よく向こう岸へ倒れた木があれば、その上を歩けることに気付いたことでしょう。自然「丸木(丸太)橋」の誕生です。丸太が都合よく対岸に倒れている場所を捜すより、自ら木を切り倒して小川に渡すことに気付くまで、どれだけの年月を要したのでしょうか。丸太では歩きにくいので、木を割って平たくしたり、川幅が広くて1本の木だけでは足らない場合は、数本の木を次々と渡すこともあったでしょう。更には、間隔を開けた2本の長い丸太の上に板を横置きに並べ、幅の広い橋へと発展したのではないでしょうか。
 川を歩いて渡るには浅瀬しかありません。浅瀬に石があれば、その上を渡れば水に濡れなくていいことを知ります。都合よく石がない時、自分で石を並べればいいことにも気付いたことでしょう。これが石橋(いわばし、飛び石橋)の誕生でしょう。その後、歩きやすくする為に、石と石の間に長い平たい石を渡して、石桁橋が誕生したのではないでしょうか。
 石桁橋では、都合のいい長さの石が多量に必要となります。小さな石でより長い径間(スパン)の橋を目指して、石造アーチ橋の誕生となります。(参照:桁橋からアーチ橋 橋の種類
飛び石橋 丸木橋 沈み橋
飛び石橋 丸木橋 沈み橋

「はし」という漢字

 橋の意味を再確認しようと、幾つかの辞書で「はし」と読めるものを調べてみました。
はし \・谷・低地・鉄道線路・道路などで隔てられた両側の間に架けわたして、通路とする構造物。橋梁(きょうりょう)。転じて、かけわたすもの。仲介。媒介。
はし (事の起こり。はじめ。△悗蝓ふち。さき。切り離した部分。切れ端。ぢ燭の中の一部分ゴ屐あわい。
はし 食べ物を挟み取り、食事などに用いる、細く小さい2本の棒。
はし くちばし。鳥類の口器。上下の顎(あご)が突き出して角質でおおわれたもの。
はし 庭から屋内に昇る道。きざはし(階段)。あがりだん。
はし ,呂靴粥9發そ蠅愿个襪燭瓩瞭散顱△けはし。双方の関係を取り持つこと。また、その人や物。なかだち。橋わたし。
はし ‘鵑弔里發里砲呂気泙譴辛分。∋間・距離の隔たり。0貘海の時間・空間。ご愀検ナ事の中間。

 読みは「はし」でも、漢字は一つ一つ違います。しかし、互いに関連がありそうですね。元々「はし」という日本語(日本古来からの言葉、大和言葉というのでしょうか)に、それぞれの「はし」を意味する様々な「漢字」を当てたものかと。漢字の一つ一つを調べていけば「はし」という音の語源が推測できそうです。橋は岸と岸、箸は食べ物と口、端が嘴と同じなら食べ物と口、階は庭と屋内、梯は低い所と高い所というように「何かと何か」の「間にあるもの」「つなぐもの」でしょうか?
 そこで、国語大辞典(小学館)で「橋」の語源を調べることに。「両岸のハシ(間)をわたすもであるところから、ワタシの略転、早く渡れるところからハヤシ(早)の中略、両岸のハジメ(初)からハジメ(初)へ通ずるものであるところから」などとありました。川に架かる橋だけでなく、物と物、岸と岸、人と人、空間と空間をつなぐ手段や事物を「はし」と言うのでしょう。また「橋渡し」「橋を架ける」などという言葉もあり、単なる「橋」という以外に、もっと深い意味を持っています。「端(はし)には「はじめ」の意味もあります。「はじめ」に「はし」ありきですね。日本古来からの言葉「はし」、様々な資料をひもとけば更に面白いことに気付くかも知れません。
 「はし」という漢字は現在”橋”と書くが、古くは”間”と書いていたことが多かった。もともと、ものとものとを結ぶ”あいだ”の意味から、その両端部の”はし”をも意味するようになった。
 橋は、水平に渡すものであるが、垂直に渡す”はしら”(柱)も同じ語源である。また、母船から陸に荷物を運ぶ”はしけ”(艀)も同様で、艀は”動く橋”なのである。(雄山閣出版「橋の文化誌」より)
 ところで、私はというより、熊本人は「橋」と「箸」等の発音は区別できません。熊本弁には、アクセントやイントネーションがなく、区別しません。共通語ではアクセントで区別するようですが、何度聞いても、私には判りません。これも「橋」と「箸」等が元々同じものだったという証拠でしょうか。

「橋」を使った言葉

 辞典等を調べていくうち、橋を使ったことわざや言い回しがいろいろ。(小学館「ことわざ大事典」等より)
言葉 意味
石橋を叩(たた)いて渡る 用心の上にも用心する事。
危ない橋を渡る 危険(違法)な手段で仕事をする事。
危ない橋も一度は渡れ 安全堅実だけでなく、一度はあえて冒険をせよ。
一度は渡る橋 誰でもいつか一度はする経験であること。
天に橋をかける 成功し難い望みを持つ事。
橋がなければ渡られぬ 仲介してくれる人がいないと物事はうまく運ばない。
紅葉の橋 天の川に架かっているという想像上の美しい橋。
渡りかけた橋 いったん関わりあった以上、途中でやめられない事。
石橋を叩いて渡れ 用心しすぎるという事はない。用心には用心を。
橋をかける/橋をわたす 橋を取りつける。双方の間にあって仲立ちをする。交渉の手掛かりをつかむ。
Don't cross your bridges before you come to them.(橋に来る前に橋を渡るな、橋のたもとに着いてから橋を渡れ) 取り越し苦労はするな。「明日は明日の風が吹く」「案ずるより産むが易し」「待てば海路の日和あり」などかな?
Make a bridge of gold for a flying enemy.(逃げる敵には金の橋を作ってやれ) 逃げる敵の逃げ道を絶ってしまえば、逆に噛みつかれる恐れがあるから、立派な逃げ道を作ってやれ。
「このはしを渡るべからず」の立て札 端でなく、橋の真ん中を渡った「一休さん」
 調べれば、もっとあるかと思います。(2004/11/19)

広島の藤原様より、次のような情報を戴きました。(2005/07/07)
大和言葉の「は・し」
は=でるもの・出ていくもの・出て調和し広がるものを表すとありました。
   花、鼻、腫れる、晴れる、春、張る、はし、のように「発現」ですね
し=は「水」の意味で、したたる、しずく、湿る、
   占める、締める、のように「統一」を表すとありますね
橋・箸・・・日本のことばって、うまくできていますね。絶妙です!
      向こうとこちらをつなぎ統一・食物とヒトをつなぐ、命のつなぎですね。

 かな文字一字一字にも意味があるんですね!そこで、大和言葉関連の本を捜しに県立図書館へ。残念ながら、一音一音の意味が載ってるような辞書には巡りあえませんでした。岩松空一著「やまとことば」(小学館スクウェア発行)によれば、「はし」は「端と橋との間をつなぐもの」で、「橋」はA点とB点の間に架けてあるので「はし」と言う。更には、「間」も「はし」。梯子(はしご)、柱(はしら)、艀(はしけ)、箸(はし)との関係も、再確認することができました。「は」「し」から「はし」への意味の繋がり等、知りたいものです。

 ところで、今夜は七夕。七夕に雨が降れば、カササギの群が翼を広げて「橋」となり、織姫を彦星のもとへ渡してくれるのでしたね。ちなみに、「ひこ」や「ひめ」の「ひ」は「秀でる」の意味で、「こ」や「め」はそれぞれ、男・女を表す大和言葉。つまり、「ひこ」は「世に秀でた男性」、「ひめ」は「世に秀でた女性」と言う意味で、それぞれ高貴な男・女を指す言葉とのこと。「七夕」を何故「たなばた」と読むのかも面白そう。橋の話題からは外れてしまいましたが、興味は尽きません。新たなページも考えてみたいものですね。
最終更新:2009/12/12

<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会


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