ダム問題を考える
 本ページは、2003年当時のPC同好会員が「水問題」の1ページとして個人的見解で作成・発信したもので、本同好会や本校を代表する見解ではないことをお断りさせていただきます。ところで最近、荒瀬ダムが再びクローズアップされ、論議が巻き起こっています。論議が深まることは本ページを発信した先輩の望みでもあったようです。(2008/07/04 熊本国府高等学校PC同好会)
 

水力はクリーンエネルギー!
水はエネルギーをも生み出す
その為に川をせき止め
ダムを造った

 

 ダムは、生活用水の確保や洪水対策以外にも発電にも利用されるなど、水の多面的かつ効率的利用に大きな役割を担っている。今熊本では、「川辺川ダム」と「荒瀬ダム(右写真)」の問題が大きくクローズアップされている。川辺川ダムについては「建設すべきか」「中止すべきか」と大きく意見が分かれ、荒瀬ダムはすでに2010年には「撤去される」ことが決定している。しかし、何とも納得いかないことも・・・。

 川辺川ダムは建設「推進か中止か」の論議、湖底に沈む五木村(下の写真)の場合、中心部のほとんどの住民は代替地に移転したり、既に村外へ転居した人も多いという。周辺の山肌は切り崩され、新しい道路や代替地の整備工事もほぼ終了し、今(2003/08/24現在)小学校の解体作業も進んでいる。中止したとして、はたして元の状態に戻ることができるのか。これ以上の自然破壊は進まず、跡地は子守唄の里として保存できる(?)というのでは納得できない。住民が消えた村の保存なんて、幻のダムの教訓を伝える記念碑とでもするというのか。計画段階で討議がなされかったとは思えないが、「何でもっと論議されなかったんだろう?」とも。それとも、元々のダム計画そのものが、一時的な利権・利益を目指したものだったというのか。今になっての「建設か中止か?」が、更に問題を難しくしている。

 荒瀬ダムに関しては、撤去するにしても、湖底に残る汚泥による環境への影響も問題となっている。荒瀬ダムを撤去してもすぐ上流には瀬戸石ダムがある。更には、水力発電でまかなってきた電力をどのような形で補うのか。水力発電ならば、新たなダムが必要となる。火力や原子力にしても様々な環境問題が生じる。水力はCO2(二酸化炭素)も発生することなく、地球温暖化や資源枯渇の面からも利点がある。このダムを撤去することが本当に最善の策なのだろうか。結論を急ぎ過ぎているようで、疑問が残る。地球的視野で考えて何が最善なのか、この点の論議が不足しているように思える。

 荒瀬ダムの水を利用する藤本発電所は、運転開始当時(1955年)は県内の電力需要量の20%(現在では2%以下)を占め、大きな期待を背負って誕生した。ダム湖は、水利対策ばかりか、本県ボート競技のメッカとしても長年貢献してきた。九州の総発電量に占める水力の割合はわずか7%という。このダムは貴重な水力発電を担っている。水力というクリーンエネルギーという利点もある。新しいダムを作る為には更に膨大な費用が掛かるだけでなく、建設費用以外にも補償問題や環境破壊への対処等、様々な問題が発生し、完成までに膨大な年月を要する。

 経済的価値が少なくなったら取り壊せばいいという考えでいいのか。それが建設当初の計画だったのか。一度傷ついた地球の傷は簡単には癒えない。可能な限り永く利用することが大切では。もっと視野を広げ、環境問題等、様々な角度での検討が必要では。湖底に堆積した汚泥の処理等は撤去時の問題ではなく、計画段階から予想できたもの。造りっぱなしでアフタケア―を考えていないことが問題。荒瀬ダムや瀬戸石ダムは魚が遡上する為の魚道設備(下に写真と図)も完備し、完全なものではないかも知れないが(既存の設備を利用し続ける為には可能な限りの対策を尽くすことが必要)魚に優しいダムでもある。

荒瀬ダム「くまがわあゆみ館」にて 瀬戸石ダム「川のとっと館」にて
両館とも、魚が魚道を行き来する様子を観察する窓が設けられています。ともに開館時間は9:00~17:00で、毎週火曜日が休館日です。「くまがわあゆみ館」は国道219号線沿いですが、「川のとっと館」は国道からはダムを渡った対岸になります。(撮影:2003/10/26)

 ダムは、第二次世界大戦後、洪水対策等の治水やエネルギー開発の名の下、全国各地に次々と造られていった。今、それらが寿命ということで廃棄されていく時期を迎えつつある。取り壊してしまうのではなく、リニューアルし更に長期間利用し続けられないものか。新たなダムを建設するより既存のダムを永く利用していくことが地球の為にプラスであることは明白。荒瀬ダムの問題を、全国のダム再生のモデルケースにして考えて欲しいと思っている。今日の技術を生かせば、不可能なことではないのでは。

 ダムに問題があるのではなく、それを建設したり撤去したりする人間のほうに問題があるのでは。ダムや橋や道路を建設することは、地球を切り刻むこと。その痛みを知り、できるだけ寿命を延ばしてやることが人間の使命ではなかろうか。一時的な損得で判断するのではなく、大局的見地で判断しなければならない。「壊しては造る」浪費の時代は終り、これからは「既存のものをできるだけ永く使う」節約の時代でもある。そのような、時代の先頭をきったダム問題の解決方法が必ずあるはず。

 地球温暖化が問題となっている上、海外依存の度合いが大きい我が国のエネルギー事情は深刻。クリーンで純国産のエネルギーを生み出すダム、しかも50年近くも赤字を出していないダム。このまま取り壊すなんてもったいない。電力需要を押さえることができるのか。快適な生活の為に電力は使うだけ使い、ダムは撤去する。後は火力や原子力に頼るというのか。身勝手なのは私たち人間。川辺川ダム建設推進の駆け引きに荒瀬ダム撤去問題があるとのうわさも、本当ならまさに言語道断。2つのダム問題、目先の利益にとらわれることなく、100年・1000年後の熊本・日本・地球を考えた、より良い最善の決着を願いたい。
 

 <終りに>
 ダムといえば土木、土木といえば橋。江戸末期から明治のはじめ、アーチ式石橋を次々と架橋していった当時のハイテク集団「肥後の石工」、彼らの手でアーチ式の石橋が日本国中に伝わります。郷土熊本の偉大な先輩たちを見習い「ダム再生の流れを全国に!」とも。
 専門的な知識があるわけでなく、ただ感じたことをそのまま書き綴っただけです。言葉不足や勘違い等もあるかと思います。お気づきの点等、ご指導いただければ幸いです。(2003/08/27)
 本ページを閲覧された方より、アドバイスメールをいただきましたので、紹介いたします.。私たちの考えが及ばない点など、様々なご意見やアドバイスが!
制作:熊本国府高校パソコン同好会

熊本の水 本ページへのアドバイスメール 前のページへ