新100校プロジェクト 平成10年度実施報告 


熊本国府高等学校 Page2/2

2.平成10年度の成果と課題
 校内でもほとんど知る者もなかった「まぼろしの卒業式」という小さなページが、ビデ
オになり、全国の小中高校、図書館等に無償配布されることとなった。 第1世代である
第1回卒業生らの戦災証言を、第2世代である教師が聞き取り調査してレポートにまとめ、
更に第3世代である現在の生徒たちが、このレポートをもとにして、インターネットを通
じ、戦争の悲惨さを訴えているというテーマである。
 この取材において、生徒たちの応対は実に堂々と自信に満ちており、これもネットワー
ク活用の恩恵であり、これまでの活動の成果の一つでもあったと思う。
 「肥後の石橋」がコンテストへ入選したことも、忘れてはならない。苦労して作成して
いる生徒たちへの励みにでもなればと、応募した中の1点である。

 発信ページが多くなるに従い課題も増える。ページ更新もその一つである。担当者が卒
業した場合は尚更である。後継者探しは簡単ではない。興味や関心あるテーマの場合は取
り組みやすいのだが、興味や考えが簡単に一致するものではない。その間を取り持つ指導
者の役割は重要となる。時として教師自身が各テーマにのめり込むことも必要となる。当
方自身、生徒たちのページに触発され、趣味の領域が次第に拡大しつつある。これこそ教
師と生徒との新たな関係ではないか。教師自身の興味、知識、経験の拡大は、自己啓発力
の高揚と相まって、今後の生徒指導に必要な素養だと確信する。

 発信したいテーマを見つけ、内容を検討し、必要な資料や素材を収集し、解りやすくま
とめて発信するという「 Webページ制作」こそ、「主体的・積極的な情報活用能力」育成
の最たるものである。閲覧者からのアドバイス、激励や情報提供などもあり、社会の反応
を肌で感じながら実践できる生きた教材である。社会生活の中で情報の果たす役割や影響、
情報モラルや責任問題の理解にも役立っているものと確信する。

 まだ一部の教科や教師の実践に終わっており、全クラスへの授業導入は課題として残る。
インターネットに接続されている教室が1室だけという設備面や、年間計画との兼ね合い
や授業担当者の足並み等の問題点も。更にはネットワークセキュリティ対策をはじめとす
るシステム管理やサーバ等の更新、利用にあたってのネットワーク上のモラルやエチケッ
ト指導も更に重要な課題である。システム管理に関しては、より簡易なシステムの出現を
切望するものである。

3.新100校プロジェクトに参加して
 100校プロジェクトに選定されて5年。応募前には「インターネットは大学やコンピ
ュータ技術者が使うもので、高校になんて」と考えていたことが遠い昔のように思えてく
る。急速に普及してきたインターネット、将来を生きる生徒たちにはもとより、私たち教
師にとっても、絶対不可欠な道具となりつつある。生徒たちは、チョークと黒板などより、
この新しいメディアに関心と興味を抱いていることは事実。機器やアプリケーションソフ
トの操作習得に終わらず、情報活用能力の育成を含めたインターネットリテラシー教育を
全校生徒に広げ推進していきたい。
 今、教師と生徒の距離が縮まりつつあることを実感している。「共に学んでいく」とい
う「共同学習者」という関係が更に強まり、教師の役割も単なる知識の注入者から、生徒
が自ら学びたくなるような「素材、方法、場所」の提供者へと変化しなければならない。
過去の知識だけで指導できる時代は終わった。教師も常に学ぶ姿勢をもつことが重要だと
感じている。今後も「ネットワーク上の多くの人々に支えられながら、生徒と共に学んで
いる」という喜びをかみしめながら、更に楽しく、豊かな情報を発信し続けたい。
 本プロジェクト参加校に与えられた使命は「インターネットの健全な発展に寄与するこ
と」だと感じており、このことを今後の指針として活動したい。また、ネットワーク環境
をご提供いただいた「100校、新100校プロジェクト」、並びにご支援いただいた事
務局、地域ネットワーク研究会、企業の皆さまへお礼を申し上げて報告を締め括りたい。

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