流星群特集

しし座流星群
〜2001年11月19日、日本で大出現?〜


これは1998年のしし群のときに書いたものです。
そのうち今年のしし群についてアップする予定です。


 毎年11月17日を中心に見られる「しし座流星群」。例年なら1時間に10個程度の流星の出現しか見られないのですが、今年のしし座流星群では1時間に数千個という流星の大出現の可能性があり、「流星雨」が見られる期待が高まっています。ここでは、11月18日未明に起こるかもしれないこの「流星雨」現象について述べています。


 ◎流星群とは

 「流星群」とは、毎年ある時期に決まった方向から多くの流星が流れる現象で、1年間にいくつもの流星群が活動しますが、群によって流星の出現数が多いものもあれば少ないものもあります。また、流星が飛んでくる方向(放射点という)がある星座名をとって、○○座流星群という名称で呼ばれています。流星群の中でも、1月に見られる「りゅう座流星群」、8月の「ペルセウス座流星群」、そして12月の「ふたご座流星群」の3つは、「3大流星群」として有名です。これらの流星群では、ピークの時に1時間当たり30〜50個程度の流星が出現します。


 ◎98年のしし座流星群について

 毎年11月17日頃を極大に見られる「しし座流星群」は、極大時の1時間当たりの流星の出現数は10個程度で、通常は小規模の流星群です。しかし、今年の場合は特別で、1時間当たり5000個、もしかしたら数万個などという「流星雨現象」を起こす可能性があるのです。 では、なぜ今年のしし座流星群ではこのような大出現の可能性があるのでしょうか。そもそも流星群は、すい彗星が撒き散らしていったチリが広がっている区域を、地球が公転によって毎年同じ時期に通過することにより起こります。流星のもとになる、それらの彗星がらみのチリの大きさは、せいぜい直径1〜2ミリと、砂粒ほどに微小なものです。その「砂粒」が、地球大気圏に高速で突入する際に、地球大気との激しい摩擦により、一瞬だけ燃えて輝き、流れ星として見ることができるのです。しし座流星群の流星のもとは、母彗星のテンペル・タットル彗星が撒き散らしたものですが、今年2月にこの母彗星が33年ぶりに回帰し、地球軌道上に新たに流星のもとを撒き散らしていきました。このため、広がっているチリの密度はうんと濃密になり、回帰後初めてその区域を地球が通過する今年のしし座流星群の時に、滅多に見られ ない流星の雨が起こるかもしれないのです。 しし座流星群の母彗星は33年周期で回帰するので、母彗星回帰と関連して起こる流星の大出現も33年ごとに起こります。ということで、前回の「しし座流星雨」は1966年にアメリカで見られました。流星の大出現は全世界で同じように見られるものではなく、大出現が見られる地域はある程度特定されます。1966年の時はアメリカで流星雨が見られましたが、今年の場合は日本が大出現する範囲に入っており、もし今年日本で流星雨が見られるとしたら、これはおそらく一生のうち1度あるかないかの大天文現象なので、天文ファンならずとも絶対に見るべきでしょう。ただでさえなかなか見られない流れ星が、今年11月18日の明け方に限っては、絶え間なく夜空を飛び交い、大出現をするかもしれないのです。
 では、実際にどのくらいの数の流星が出現するのでしょうか。実は流星の出現数の予測は大変難しく、少なめに見積もられていても大流星雨となることもあり、反対に流星雨が期待されてもある程度の大出現でとどまることもあります。このためはっきりとした数値はわかりませんが、一説によると日本では、極大時の1時間に2000個程度の出現が予想されています。これはざっと計算して、2秒の間に1個の流星が流れる感じです。しかし、1833年や1966年のしし座流星群では1時間に10万個以上という大出現をしたこともあります。東アジア(日本も含む)で大出現が期待される今年、日本で同じように時間当たり10万個以上の流星雨が見られてもおかしくないのです。もし時間当たり10万個の出現が起こったなら、1秒間に約30個の流星が飛び、夜空はどこも流星で覆われ、夜なのにうっすら明るくなるほどの天変となるでしょう。過去のしし座流星雨で、世界が火事だ、と泣き叫んだ人がいたのも肯けます。なお、少なく見積もっても、今年は極大時に時間当たり200個程度の出現は最低限期待できそうです。地球が彗星のチリの密集地帯をうまく通過しさえすれば、世紀の大流星雨は見られるはずです 。



午前2時の東の空
しし座はまだ低く、放射点も30°前後。この頃からしし座に注目していたほうがよいでしょう。目印は黄色で示した"?"の裏返しのような星の並び。

午前4時の東の空
大流星雨が起きるかもしれない、流星群の予想極大時刻の頃。放射点のあるしし座は見上げるほどに高くなっており、最も目が離せない時間帯です。

 ◎しし座流星雨を見よう

 今年のしし座流星群は、11月18日午前4時過ぎに極大が予想されています。このため、しし座流星群の流星は、極大日の11月18日に向け、徐々に多く出現するようになります。数日前から空を眺めて、増えていく流星を見ておくのもいいですが、極大日まではそう多くは出現しないので、やはり大出現が起こるとされる11月17日から18日にかけての夜だけ集中して見るのがいいでしょう。 流星群の流星は、必ず、放射点と呼ばれる決まった方向から放射状に飛び出すように流れます。しし座流星群の場合はしし座に放射点があるので、必ずしし座の方向から飛び出すように流れます。このため、流星雨が起きたなら、しし座の方向に我々が吸い込まれていくような感じで見えます。 当日、放射点のあるしし座は、夜半過ぎに東の空から昇ってきます。このため宵のうちは、まだしし座が地平線下なので、しし座流星群の流星はあまり見られません。流星の大出現は、しし座が東の空に顔を出す11月18日午前0時頃から、夜明けまでの間に起こるとされ、この間が目が離せません。前述の通り、日本では18日の午前4時過ぎに流星群の極大が予想されているので、この頃に流星雨が見られるかもしれないので す。前日の17日から眠らずに18日の夜明けまで空を見続けるのが最もベストな見かたですが、そのような余裕のない方は、早起きをして18日午前3時頃からぜひ空を見上げましょう。大出現は未明に起きるので、私達にはちょっときついかもしれませんが、33年に1度のしし座流星群の大出現を見るために、ぜひ当日は早起きをしましょう。流星群の極大の予想は午前4時過ぎとなっていますが、実際の極大は予想時間とズレることもよくあるので、あまり当てにはできません。何時間か早く大出現が起きるかもしれないし、逆に予想時間より遅れて、夜明け頃に大出現が起きることも考えられます。余裕があるなら、夜半過ぎ頃から空に注目しておいたほうがよいでしょう。さて、しし座は、午前3時になると東の空40度の高さまで昇ってきます。放射点は、「ししの大ガマ」と呼ばれる、特徴的な「?」マークの裏返しのような星の並び(図参照)の中にあるので、これを目印にしておきましょう。どうしても見つけられない場合は、流れたいくつかの流星の軌跡を辿って、一点で交わるところを、周囲の星々と一緒に放射点として認識しておけばいいでしょう。極大が予想される午前4時過ぎには、しし座は50度 以上の高さまで昇り、放射点も高くなるので、ちょうど見やすい頃に大出現が予想され、その上、当日は妨害になる月明かりも全く無いので、条件は最良といえます。午前5時半になると、次第に空が明るくなり始めます。この頃放射点のあるしし座は、天頂付近まで昇りつめていて、空全体でまんべんなく流星の出現が見られるはずです。流星には、非常に明るく輝くものも数多いので、空が明るくなり始めても、大出現が続いているならまだ見られるかもしれません。 流星を見る際は、立って見らずに、地面にシートを敷いて寝て見た方が楽に見られます。また、できれば見晴らしの良い山などへ出かけて見たいものです。そのほうが、少しでも光害を避けられ、また空気の透明度にも期待できるので、たくさん流星を見るのにはおすすめです。 さて、滅多に見ることのできない「流星雨」を見るチャンスが、33年ぶりに訪れ、天体観測歴6年の作者も、何年も前から一番楽しみにしていた天文現象だったので、今はワクワクしているところです。しし座流星群極大の前日には、マスコミでも流星雨のことを取り上げると思うので、詳細についてはテレビなどを見て参考にしてください。一番気になるのが 天気ですが、やはりこれだけは私達には何にもできないので、天に祈って当日曇らないことを願うしかないでしょうね。