流星群特集

「流星群」の正しい認識
〜流星群とは何なのか〜


1998年のしし座流星群では、大勢の人々が山などに流星を見に行って大騒動になったが、その時、多くの人々は「しし座流星群」について誤った認識をしていたようなので気になった。普段あまり星を見ない人は天文に馴染みが無いせいか、おそらく「しし座流星群」という現象が起きるのを知ったのも、せいぜいその2〜3日前、マスコミや知人から聞いて知ったのであろう。このため、しし座流星群のことを、「流星の群れが地球に大接近する」と勘違いしていた人が大勢いた。星についてあまり知らない人ならともかく、世間に放送する一部のマスコミでも、堂々と「33年ぶりに『しし座流星群』が大接近」などという間違った表現をしていたので、見ていて許せないものがあった。そこで、そもそも流星群とはどんな現象なのか、また特別だった去年98年しし座流星群について検証してみた。

 まず、「流星群」というものを「流星の大群」という宇宙に浮かぶ一種の"天体"としての認識をもっている人は、まずその概念を捨ててほしい。正しい「流星群」の意味は、「毎年ある時期に星空の一定の方向から放射状に流星が飛び出すように見える」という天文現象の名前であり、「○○すい星」などの天体名とは違うので、すい星の接近みたいに「流星群が地球に大接近」などという表現はれっきとした表現の誤りである。やはり一般の人々をも注目させる天文現象といえば、普段すい星の接近ぐらいしかないからか、天文現象といえば「地球に大接近」という言葉が自然に出てきてしまうのであろうか。テレビでも解説があったように、たしかに去年98年のしし座流星群の場合は普段のしし座流星群とは違い、33年ぶりに「流星の素になる物質の濃密部分」を地球が突入するかもしれず、雨のように流星が大出現する可能性があった。しかしそれが、マスコミ側の説明不足か、それとも視聴者の認識不足により、ひどい場合は「33年ぶりにしし座流星群が大接近」などという、とんでもない誤解を招いてしまったのである。そもそも、しし座流星群という現象が 33年に1度起こるのではない。しし座流星群は毎年見られているのである。先にも述べたように、流星群は【毎年同じ時期に一定方向から多くの流星が見える】現象なのであり、流星群の流星は毎年毎年見ることができる。なぜ毎年同じ時期に流星群が起きる(正確には流星群が極大になるという)のかというと、地球が太陽の周りをまわる「公転」により、毎年同じ時期にすい星が地球の公転軌道上にバラ撒いたチリ(流星の素になる物質)の中を通過するからである。それらのチリが地球にぶつかる時、地球大気との摩擦により、激しく燃えて一瞬だけ光り輝いて見える──それが流星の正体なのだ。だから流れ星は、最初から流れ星の状態で宇宙空間に浮遊しているのではなく、もともとはありふれた宇宙の微小なチリ(直径わずか1〜2mm) なのだ。

 となると、しし座流星群はなにも33年に1度しか見られないわけではないのもお解かりいただけたであろう。しし座流星群は毎年11月17日頃を中心に活動し、この前後数日間は毎年たくさんの流星が流れている。ただ、この流星群の 33年ごとに訪れる「大出現の当たり年」以外の年では出現する流星が少ないため、今回のように話題にならないのだ。だが確実に、しし座流星群の流星は毎年 11月17日前後に出現していて、私も毎年しし座流星群の流星を観測し続けている。例年のしし座流星群なら1時間に10個程度の流星しか見られないが、去年98年のしし座流星群は大出現の期待が高まり、流星群が極大になる 11月18日未明には流星が雨のように降り注ぐ「大流星雨」が起きる可能性があったのだ。しかし、流星が大出現する流星雨の予測は困難で、過去の例からも外れることが多い。このため、今回の予測も裏切られ、流星雨が起きなかったどころか、流星の出現は例年よりやや多い程度の極めて小出現に留まってしまったのである。しかし、流星をあまり見たことがない一般の人々はこの予想以上に出現が微少だった98年のしし座流星群でも、数十個程度の流星を見れただけで満足したようだった。

 もちろん「流星群」はしし座流星群だけではない。年間を通して、実に数多くの流星群が活動している。挙げればきりがないが、どの流星群も流星が飛び出てくる方向(放射点)にある星座名をとって「○○座流星群」と呼ばれている。もちろんそれぞれの流星群によって、流星の出現数、流星の特徴、流星の速さなども様々だが、特に出現する流星数が多い3つの流星群が有名だ。1つは1月4日前後に見られる「しぶんぎ座流星群」、もう1つは8月12日前後に見られる「ペルセウス座流星群」、そして12月13日前後に見られる「ふたご座流星群」だ。この3つの中でも一番出現する流星数が多いベスト1の流星群がペルセウス座流星群で、この流星群の場合はもっとも多いときは1時間に50個以上の流星が見られる。つまり、98年のしし座流星群を上回るの流星出現が望めるのだ。98年のしし座流星群の感動をもう一度、という方はこの8月12日前後に見られるペルセウス座流星群をぜひ見よう。 しし座流星群の話に戻るが、実は去年のしし座流星群が大出現しなかったからといって、「大流星雨」を見るチャンスは今度は33年後にしか訪れないと思っている方も多いと思うが、実は1998年と並んで、今 年1999年のしし座流星群も33年に1度の大出現が期待される年なのだ!研究者の間では、流星群の母彗星が接近して最初に流星素密集地帯を通過する1998年が流星雨の起きる年だとする説と、その翌年の1999年に流星雨が起きるとする説の2つがあった。 1998年のしし座流星群で大出現しなかったのだから、1999年流星雨説のほうが有力的になったとも考えられる。マスコミでは「次回の大出現は33年後」と述べていたのもあったが、33年後の前に、翌年の今年1999年のことを忘れてはいけない!私としては、去年98年のしし座流星群よりも、今年のしし座流星群のほうが、たとえ流星雨は起きないにしても出現数は断然多いと思う。でも、去年98年にさんざんマスコミで大報道して人々は大勢流星を見に行ったのだから、期待が高い肝心の今年1999年のしし座流星群は、人々に忘れられて注目されないかもしれない。過去の例から、世間が騒ぐと流星群は小出現になってしまうことが多く(もちろん偶然だろうが)、おそらく騒がれないだろう今年のしし座流星群に期待が高まり、我々天文ファンは今年のしし座流星群を静かに待ち望んでいる。

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