2000年7月16日深夜 皆既月食

部分食の経過

観測会に参加した知人による撮影(400mm望遠レンズ)。

皆既月食中

追尾なしの露光のため、ブレてしまっている(400mm望遠レンズ)。

2000. 7.16-17 月食データ
欠け始め 20時57分
皆既食の始まり 22時02分
皆既食の最大 22時55分
皆既食の終わり 23時49分
月食の終わり 00時54分
皆既月食継続時間 01時間47分
 2000年7月16日の夜、3年ぶりに皆既月食が起きた。前回1997年9月17日未明の皆既月食で、初の月食観測を果たした私だったので、今回の皆既月食は、2度目に見る皆既月食ということになる。
 しかし、今回の皆既月食は、最大級に皆既の継続時間が長いという皆既月食なのである。それは、今回は月が地球の影のど真ん中を通るだけでなく、月までの距離も一番遠い状態で起きる皆既月食であるから、皆既月食継続時間が1時間47分という最大級の長さになるのである。
 そんなわけで、マスコミでも「141年ぶりに長い皆既月食」とか、「20世紀最後の皆既月食」など、色んな表現で今回の皆既月食を大きく取り上げていた。マスコミで、こんなに大きく皆既月食のことが取り上げられるのは、やはり皆既月食の長さが記録的に長いからなのだろうか…とも思ってしまったが、事前のマスコミの月食報道も手伝い、この2000年7月16日夜には、多くの人々が月食を眺めたようである。

 今回の皆既月食は、とにかく「最大級」ということで(しかも観測条件もかなり良い)、私は絶対に見逃す事はできなかった。例え曇ったとしても、晴れている場所まで出かけるつもりでいた。何しろ、ここまで影のど真ん中を通る皆既月食は今後数十年は見られないだろうから。だから、とにかく天気だけは悪くならぬよう祈っていた。天気予報では、週間予報の発表当初の頃は「雨」の予報が出されていたけれど、月食の前日には当日の予報が「晴れ時々曇り」に変わっていてくれて、かなり安心した。だから、もう皆既月食は見られると確信していた。

 いよいよ迎えた皆既月食の夜。しかし、天気が(予報とは違って)雲が多く、心配になってきた。午後7時45分に、知人が車で迎えにきたので、観測機材である天体望遠鏡を車に積み込んだ。今回の皆既月食は阿蘇方面の「扇坂展望台」へ遠征観測に行った。予め、知人らに「月食観望会を開催」と伝えていたので、「扇坂」へ到着すると、この知人が誘ったと思われる家族が来ていた。そんなわけで、初対面のその方々とも共に月食を観望することとなった。私は、もう月食がやがて見られるということで、ワクワクしてたまらなくなってきた。月食前の満月を見ていると、「あぁこの満月がやがて欠けてくるんだなぁ…」と思って楽しみになってきたのである。
 さて、観測場所である扇坂に到着後、早速望遠鏡を草原のほうまで運んでいった。観望会参加者が、重い望遠鏡を運ぶのを手伝ってくれたため、苦労せずに済んだ。そして、持ってきた2台の望遠鏡をセッティングしたのだが、実はこの2台の望遠鏡は、どちらとも壊れて使えない状態になっていたのだ!! まず口径10cm反射のほうは、架台(赤道儀)部分が壊れていて、望遠鏡の重心不安定によりなんと動かす事すらできなくなっていたのだ。そして、これまで常に使用していた20cm反射は、なんと先日接眼部を低倍率アイピースと共になくしてしまったため、使えなかったのだ! 持ってきた意味がなかったけれど、それでも、ファインダーから月を見せたりしたので、全く使わなかったわけではなかった。それにしても、望遠鏡でしっかり月食の経過の様子を観測するつもりでいた私は、もう今夜はただ目で欠けてゆく月を眺めるだけの、まさに「観望」による月食見を余儀なくされてしまい、残念でならなかった。持ってきた一眼レフカメラも、電池が切れていたので、撮影すらできなくなっていた…。でも、カメラなら、観望会参加者の400mm望遠レンズのカメラで月食を狙ってもらえることとなり、少し助かった。

 さて、小さい双眼鏡で月をただ見続けるだけの観測とはいえない月食観望スタイルのもと、いよいよ月食の始まり(欠け始め)の20時57分が迫ってきた。
 いよいよ欠け始めるという、20時57分を迎えても、なんと空はほとんど雲に覆われていて、月も見えなかった! だから私は焦っていた。観測会参加者らも自分の双眼鏡などで、月が雲間から現れるのを捉えようとしていた。持ってきた2台の望遠鏡は共に導入すらできない状態であった為、しっかり観測しようと思っていた私も、仕方なく6cmの双眼鏡を手持ちで空に向けて、月が見えるのを待った。天気は完全な曇天ではなく、うろこ雲が広がっていた。このため、たまにうろこ雲の合間からチラッと欠け始める前の満月が見えたが、それも一瞬の間だけである。

 欠け始めの時間が過ぎてしばらく経ち、初めて欠けた月が双眼鏡の視野に入ってきた。わずかな雲間のため、一度欠けた月を見られてもすぐにまた見えなくなったが、確かにどんどん月は欠けていった。今回、私は撮影もすることができなかったが、知人が400mm望遠レンズで月食を撮ってくれた。撮影時刻、撮影データなどは全て記録しておらず、また追尾無しのためブレているが、何とか欠けた月と、皆既中の赤銅色の月を撮る事ができた。

 そしてやがて、月光でぼんやり光っていた雲の輝きもなくなり、月も非常に細くなってきた。それから、皆既月食へと突入し、やがて薄雲を通して、赤銅色の月が姿を現した!! 皆既になってからは、雲も一時的になくなり、しばらくの間、じっくりと皆既中の月を眺める事ができた。だが、手持ちの双眼鏡なので、97年の皆既月食みたいに、望遠鏡で月面の色が美しく変わっていく様子を見られず、それだけが残念だった。それにしても、夜空にポッカリ浮かぶ赤銅色の月は肉眼で見るとなんとも幻想的であった。まだ2度目に見る皆既月食なので、今まで写真で見た皆既月食の月が、そのまま夜空に浮かんでいるように見え、新鮮な印象だった。
 というわけで、皆既月食をただ眺めるだけの「観測会」になってしまったが、山で見ただけに、幻想的な雰囲気を味わえた。その後、再び曇ってきたので、AM0時には観測を諦めて帰ってしまった。あとで知った事だが、この熊本だけが月食中天気が悪かったらしく、全国のほとんどの地域で晴れて見られたことを羨ましく思った。

月食観望会の記念撮影
今回の皆既月食は、悪天候・機材不良により、全然観測ができなかった。しかし、こうして参加者達と語り合いながら、雲間からたまに姿を現す欠けた月を気楽に眺めたことが、意外と思い出深い”観望”となった。